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安い古着が飽和状態!先進国の尻拭いをするのはいつも私たちだ、と怒るアフリカ
前回のおしゃれの終着点の記事の続きです。
昨今のオンラインショップ業界では、竹の子のように新しいやり手のアパレル起業家さんが躍進しています。アパレル業界は儲かる商売らしく、トレンドを掴んだらとにかく早く作って素早く売る、ということが当たりまえになっていて、最大で4割ほど過剰に生産することも稀ではなく、売れ残った服は廃棄。それが一番安上がり。一回や二回着ただけで服が捨てられてしまうだけではなく、一回も着られずに捨てられてしまう服もたくさんあるということなんです。
余った服があればリサイクルするか他で売ればいいじゃないか、と思いますよね。私の住むイギリスでは、余りもの、要らないものはすぐにチャリティーショップに持っていきますが、そちらも飽和状態で、チャリティーショップから流れた中古の服がアフリカに大量に送られていて大問題になっています。
私自身も無知丸出しで、「イギリスのチャリティショップ最高!要らない物はなんでもチャリティショップに持っていけば罪悪感なしに処分できる。」と思い込んでいましたが…
こちらのドキュメンタリーを見て驚愕。↓「死んだ白人男の服」という衝撃的なタイトルです。
日本語ではこのような記事を見つけました。GLOBE+(朝日新聞)の記事→大量の古着、いったいどこへ たどった先で見た驚きの「古着経済」
古着商売で成り立っている西アフリカ、ガーナのこの村では、地元の商人は中身もまるで見えない状態で古着の大きな一塊りの包みを買取ります。福袋というよりかは、一か八かのギャンブルです。売れそうな綺麗な服が入っていれば利益が見込めますが、洗濯もされず汚れた服がシミだらけで入っていることもあり、そんな「死んだ白人男の服」を掴まされてたらもちろん大損ですし、心象も悪く、西側諸国からアフリカへの「侮辱」を受けた気分さえするといいます。
古着の量がほどほどであれば、地域で仕事を生み出す「新しい産業」として良い影響もあったのかもしれませんが、村のマーケットでも処理しきれないほどの古着が毎日のようにコンテナで運びこまれ、至る所でゴミの山を作り、土地を汚し、モンスーンの度に河川、海を汚染しています。その光景は目を疑うほど酷いものです。
安い古着が溢れているので、地元のテキスタイル産業は太刀打ちできません。キテンゲと呼ばれる、独創的でカラフルなデザインで人気なアフリカンテキスタイルで作った伝統的な衣装やドレスは、シングルマザーの女性がおいそれと買えないような超高級品になってしまいました。子育てに日々奮闘しているアフリカ女性達に誇りある民族衣装を着て欲しい、と頑張ってるルワンダ在住の日本人女性、山田美緒さんの Dress for two という素晴らしい活動は以前から知ってはいたのですが、なぜアフリカンテキスタイルで地元のドレスメーカーに作ってもらうことがそんなに高額になってしまったのかという理由を考えるまでは至らず、「山田さんの活動をもっと人に知ってもらえれば、いつか問題も解決する…。」などとぼんやり思っていました。この「死んだ白人男の服」のドキュメンタリーを観て、アフリカ各地で起こっているテキスタイル産業問題の原因は、西側諸国に住む、まさに私たちが元凶だったのか!と思い知らされ、かなりショックでした。まず衣類ゴミをアフリカに送ることを止めなければ、問題の根本的解決はない、ということなんですね…。
ちなみに山田美緒さんは本当にパワフルで素敵な人で、私は大尊敬しています。Dress for twoのサイトも是非みてみくださいね。(余談ですが美緒さんのルワンダのシングルマザーとその子供たちを助ける活動のお話を聞いて涙が止まらなくなるほど感動してしまった私です。いつかその話もみなさんに届けたいです。)Dress for two とは、ドレスを日本で予約購入すると、約5.5メートルあるキテンゲの布が、購入者とルワンダの女性で「はんぶんこ」されて、2人でおしゃれを楽しむことができるという、海を超えて幸せをシェアすることができるブランドです。
先出のGLOBE+(朝日新聞)の記事によれば、ルワンダは古着輸入の関税を上げ、西洋諸国のお下がりにノーを突きつけ、自国の繊維産業を守ろうと頑張っている国なのですが、とはいってもキテンゲで作る服の価格が高い事実は変わらず。アフリカを巻き込んだ古着の循環ビジネスが、ファストファッション業界のいわば贖宥状になってしまっていることも否めません。
私は今までゴミ問題全般や、ファストファッション生産における問題点をかなり意識してきたつもりだったので、認識が甘かったな…と猛省。このドキュメンタリーの中の、「自分の国の問題をよその国に押し付けるな。」と静かに憤るガーナ人の言葉が胸に突き刺さります。
「あなたが買うものはあなた自身。」
この言葉と、「あなたが食べるものはあなた自身。」ということを母の有元葉子はよく言っています。買い物にはとかく慎重な母を見続けていますが、若い頃はあまりわかっていなかったこの言葉の意味が、今ではよくわかるようになりました。お金の使い方でその人の為人(ひととなり)が怖いくらいに見えてしまうこと。そして、自分の買うモノには最後まで責任を持つ、ということも大切なんですよね。
これは心霊写真ではありません。ついこの間、帰り道の途中でわたしが撮った写真です。
何これ?とお思いでしょうが、歩道の脇に不法投棄された古着の詰まった袋が散乱しているのです。
ロンドンに住んでいるというと素敵なイメージがあると思うのですが、Fly-tipping(フライティッピング)と呼ばれる不法なゴミ捨てが横行しているというのもこの街の事実。こんな光景は珍しくはありません。ひとりひとりが、自分の買う物に責任を持って処分するようになれば、街も環境も、どんなにすばらしくなるんだろうと空想しつつ、まず我が家からこんなゴミを出すまいと誓って、子供たちともちゃんと考えていくことを大切にしよう、と思います。
無料でモノのやりとりができるアプリ、Olio
日本では今はメルカリという良いツールがあるので、気軽に家の中の不用品を処理できますね。ただ、売るまでもないものもたくさんあります。
イギリスに住む私は、チャリティショップに寄付するものは必ず売り物になると確信ができるものだけ、と肝に命じましたから、やはり処分できない中古服が出てきます。例えば、穴が空いて繕った後があるものとか、抜けないシミがあるものとか…。多少の色褪せやシミはこちらの中古服マーケットでは日本ほど気にはされないのですが、売れ残る可能性はあります。ならば使ってくれる人に直接説明して納得してもらえるほうがいいなと思うので、私はOlioというアプリを使っています。このアプリについては前回食品ロスについてのブログでも登場します。→ 「Too Good To Go 」スマホアプリが世界を救う?
下の写真を見ていただくと、こんな感じで無料で家の不用品を出品し、お金を全く介さずに近所の人とモノのやりとりできます。直接家に取りにきてくれるので、郵送の手間も要らず楽です。どんなものが出品されているかというとお金のやりとりがなければ基本的になんでもOKで、使いかけのシャンプー(髪質に合わなかった)、封が開いたオムツ(サイズアウトした)、使用済みの引越し用段ボール箱、など本当にバラエティに富んでいます!日本の「ジモティー」というサイトが似ているようですが、Olioは手作り作品、手作り食品以外は基本無料のやりとりと決まっているところが違い、エコ活動をゲーム感覚で楽しめるような、飽きさせない工夫もあります。規定もゆるーい感じで、半分空いた蒸留酒などのアルコール類や、使わなくなった他国のコインが出品されることもあり、コインは通貨なのにいいの?と驚いたこともあります。「食べかけのケーキを出品している人がいる!」と利用者の間でざわついたこともありました。笑
そんなユニークなラインナップを見ていると、私も「これ要る人いないよね…」と諦めて捨てる前に、勇気を出してまずは出品してみよう、と思えます。
子供の古着はなるべくきれいにしてから出品。あっという間にもらい手が見つかります。
変えられるのは、ひとりひとりの消費行動。
Greenwashing(グリーンウォッシング)という、ここ10年くらいで広く使われている新しい言葉があります。この商品はいかに環境に優しい素材で出来ているかなどと、さも環境に意識を向けていますよと主張して誤魔化すマーケティングの手法をグリーンウォッシュと呼ぶのですが、昨今のファストファッション店でグリーンウォッシュをやっていないお店は無いといえるくらいです。売る側や買う側が環境に全く興味を持っていなかった頃と比べると、いくらかマシになったとも言えるのですが、グリーンウオッシュの売り文句に騙されないように、厳しい目が必要です。
ここまでの文を読むと、ファストファッションで買うのは恥ずかしい!とか、ファストファッション=悪!などと私が主張していると思われてしまうかもしれませんが、実はそういうつもりは全くありません。ファストファッションのビジネスモデルは、必要以上に頻繁に大量に買わせることで成り立っています。なので、必要最小限の買い物で、一着を長ーく着れば、それはサステナブルだと私は思います。子育て中の人は特に、子供服が一昔前よりも安く買えることに非常に助かっている、という人も多いでしょう。親兄弟で着回したり、知り合いのお子さんにあげたり、と何回も何回も着ることで、その服は命を全うしているのです。
日本人はもともとモノを大切に扱う習慣があるので、一着を長ーく着ることがカッコいい、という意識ももうすでに若い人たちの間にもあると思いますし、前回の記事で紹介したような、洋服のスワップイベントもきっとこれから盛んに開催されるのではないでしょうか。
日本ならではのリサイクル技術、ぜひ活用してみて
これぞ日本ならでは!といえる、日本の高い技術が可能にしているリサイクル方法もあります。
Bring というミツバチマークが目印の回収箱に服を持っていくと、北九州の工場でポリエステル製の古着は新しい素材の原料として生まれ変わったり、他の素材は燃料に変えてしまうという画期的なリサイクルシステムです。このシステムが早く日本以外でも可能になれば世界が変わるな、と明るい希望が持てます。
お近くのBRINGリサイクル回収ボックスがあるお店はここで検索!
場所によって自社製品のみしかリサイクルを受け付けていない、など回収箱に入れられるものの条件がそれぞれなのでまずは下調べを。
衣類ゴミ、テキスタイルゴミの問題への取り組みはまだまだ始まったばかりです。みなさんのお知恵もどんどんシェアして頂けると嬉しいです!有元の著書に習い、「使い切る」おしゃれを楽しみたいですね。