(今回は、美味しいものを作ろうとして失敗し、もやもやしつつもリベンジチャレンジする話です。美味しくなるはず!という期待が裏切られた時、料理後の片付けも放棄したい気分になりますが…やるしかないんですよね。)
アールグレイのあの香り
アールグレイの香りがたまらなく大好きな私は、この冬の時期だけに手に入るフレッシュなベルガモットを買うのが小さな楽しみ。
イタリアの南部カラブリア地方の、イオニア海に面した果樹園が主なベルガモットの産地で、温暖な気候の中、太陽の恵みをいっぱいに受けて育った香り高いシトラスをいただくと、この暗い寒い冬を健康に乗り切れる、そんな気がします。モロッコやチュニジアでも作っているそうですが、イギリスの市場に出てくるのはカラブリア産のみだと思います。フレッシュなベルガモットフルーツが出回るようになったのはイギリスではまだ最近のことです。
ベルガモットは2009年にこのnatooraという野菜・青果のスペシャリストといえるサプライヤー会社が、英国に初めて輸入しました。それから10年以上経ちましたが、ベルガモットの価格は普通のレモンの倍以上とあって、まだまだ一般的には馴染みの薄いシトラスです。この写真の natoora 路面店はロンドンのスローンスクエアに5年前にフラッグシップ店として開店したお店で、旬の目新しい野菜や果物が手に入ります。食べ方がわからないものがあっても、美味しい食べ方を教えてくれる詳しい店員さんもいます。
Natoora 245 Pavilion Road London SW1X 0BP
日本でも栽培されているベルガモット
ベルガモットはその生産の8割ほどはアールグレイティーにも使われるエッセンシャルオイルの材料になるそうで、フルーツとしてよりもエッセンシャルオイルでなら馴染みがある、という方が多いでしょう。ヨーロッパの香り…という印象が強いですが、5、6千年前に東南アジアで育てられていたものが世界中に伝わったのではないか、という説もあります。日本では土佐で10年ほど前から作っているそうですね!
このベルガモットというシトラスフルーツ、「ベルガモットオレンジ」と呼ばれることもあり、レモンとオレンジのハイブリッドのような感じ。11月から1月までが旬ですが、1月になると黄色く熟れたものになることもあり、やはり人気があるのはまだ熟れていない時期の花のような強い香りなので、ベルガモットの特に皮を使いたい場合は、黄色く熟れていない緑色のものを選んで買います。
よくベルガモットというとこの写真のようなタイのカフィアライム(こぶみかん)と間違えて売っていることがあり、私もオンラインで注文したら届いたのはこぶみかんだったことがありました。カフィアライムも素晴らしい香りですが、ベルガモットの表面はゴツゴツではなく、ツルッと丸く、香りが異なります。
フレッシュが手に入るのは冬の今だけ。さて何作ろう?
いつもなら紅茶に皮ごと入れて蜂蜜と飲んだり、サラダドレッシングにしたりするだけなのですが、今回はレモンカードならぬベルガモットカードを作ることにしました。
こどもと一緒に楽しめて素敵な動画をたくさん自分で作っている大好きなアーティスト、DJみそしるとMCごはんのレモンカード作りの動画を見て、私もすぐに作りたくなったんですよね。
ん?湯煎で最大40分もかかるの?それは面倒かも…、と私の元来面倒くさがりの悪いクセが。
前にもブログでご紹介した、私が絶大に信頼しているアイルランド人のダリナ・アレンのレシピ本にもレモンカードの作り方が書いてあり、それを読むと湯煎などせずにただただ弱火で加熱と書いてあります。ならばやってしまおう、湯煎なしで!
材料
- ベルガモット 2個
- 卵 全卵2個と黄身1個分
- きび砂糖 110g
- 無塩バター 75g
ベルガモットの皮の表面をマイクロプレインで削ります。
所々包丁で切り込みを入れ、スプーンでジュースを搾りきります。
普通のレモンよりもオレンジっぽいので柔らかく搾りやすいです。
きび砂糖とバターを入れ弱火にかけます。本当は白砂糖を使ったほうが色がきれいに仕上がるはず。しかし白砂糖は使わなくなってしまったので茶色いきび砂糖を使います。
砂糖が溶けたら溶いた卵を漉し入れます。素早く混ぜます。
バターを加え、少し煮詰まるまでヘラで底からかき混ぜつつ20分ほど加熱。煮詰まったどうかはスプーンの背で良い感じにコーティングするか濃度をチェック。これで大丈夫かしら。
煮沸消毒した瓶に入れ冷ます。あれれ!!なめらかじゃない!
今住んでいる借家はガス火がなく古いタイプの電熱調理台しかありません。火の調節が難しく、良く焦がしたりするのだけれどごくごく弱火にすれば大丈夫でしょう…と見切り発車。案の定、火が強すぎてしまったようです。
冷やして固まった感じをチェックします。こ、これは…。
火の入れすぎでバターが分離したのか、ボテっと味噌のようなテクスチャーに。味は悪くないけれど、見た目が、舌触りが、色が、レモンカードではない…。
瓶の煮沸消毒でも地味に失敗しています。鍋をぐらぐら沸かして煮沸をした後、ガラス全体に硬水のミネラル分が白い粉が吹いたように残り、汚くみえてしまうので、結局アルコールで拭くことに。これでは煮沸の意味はあったのか?と自問自答。
煮詰めている時間は良い香りにウキウキだった分、出来上がりが残念無念。
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次の日買い物に出かけ、ノーワックスのレモンを見たとたん、「リベンジだ!また作ろう!」という気持ちが湧いてきました。
そう、ラバーゼのボウルざるを使えば、湯煎が楽にできるわよと母が教えてくれたっけ。
レモンカードの黄色い色はレモン汁の色ではなく、卵の黄身の色なのだと気がついたので、今回は黄身を多めに。
材料
- レモン小の皮と果汁 4つ分
- きび砂糖 120g
- 全卵1個と黄身2個分
- 無塩バター 80g
バター以外の材料をボウルに入れ、泡立て器でよく混ぜる。(卵を入れる時に濾す必要は無し。)
大きい鍋にお湯を張り、丸ざる中を置き、その上にボウル中を重ねます。これでボウルがぐらぐらすることなく安定して湯煎ができます。泡立て器で混ぜながら湯煎で10分ほど煮詰めます。
加熱開始が左。右が10分後。スプーンチェックしなくてもボウルの側面を見れば濃度が良い感じになっているのがわかります。
ちょうどよく煮詰まったらサイコロ状に切ったバターを入れて溶かします。
(前回はバターを最初からいれて火の入れすぎで失敗したみたいなので、今回はバターが溶けたらすぐ火から外しました。
小ボウルに小浅ざるをセットし、少しずつ漉していく。出来上がってから濾すと、明らかにツヤツヤ、なめらかになります!
なめらかなレモンカードの完成!!これよこれ!と気分が高鳴りました。やっぱり舌触りって大切なんですね…。
瓶の消毒方法も簡略、進歩しました。普通に洗剤とスポンジで瓶と蓋を洗い、160度のオーブンに15分以上入れておくだけで、硬水の跡が残らず綺麗に消毒できました。
スプーンチェックを見比べると違いがわかりやすいです。左が味噌状になったベルガモットカード。右が成功したレモンカード。
失敗したベルガモットカードはビスケットに混ぜ込んで使ってしまうことにしました。
材料(12枚くらい)
- 200gのオートミール
- 失敗ベルガモットカード全部 1カップ半くらい
- はちみつ大さじ2
- 牛乳1カップくらい
- 卵一個
ベルガモットカードが冷蔵庫で冷えて固まっていたので、牛乳と合わせてを先ほどの湯煎にかけて柔らかくし、蜂蜜を溶かし入れます。今のキッチンには電子レンジがないので、やっぱり湯煎って便利。
湯煎から外し少し荒熱が冷めたらオートミールと溶いた卵をざっくり混ぜ入れ、スプーン二つを使って形を作り、180度のオーブンで15分ほど焼きました。
焼き上がったら冷まし、シトラスとビターチョコレートの組み合わせが好きなので、湯煎したチョコレートをかけて食べます。湯煎、大活躍。
ビスケットになってしまうと、これがレモンカードなのかベルガモットカードなのか、微妙な香りの違いはわからなくなってしまいました。そして子供たちの評判は微妙。
- 娘「オートミールのビスケットがリンゴとかバナナ味ならいいけれど、レモン味って意外すぎて受け付けない。ビターチョコレートもレモンも苦い。」(辛辣)
- 息子「うーん、大人の味って感じ。10点中7点かな。」(母をやる気をぺしゃんこにしない思いやりを感じます。)
コーヒーのお供に合いそうな大人の私の為のビスケットができたので良しとします。
しかしこれほどに簡単な湯煎を、なぜ面倒がってしまったのか。最初から湯煎さえしていれば、香り高いベルガモットカードができたのになぁ。
さてさて大成功したレモンカードで、クリスマスパブロバを作りたくなってきました!これはまた次回に。