おしゃれの終着点 その1

illustration by mohamed Hassan from Pixabay

今回は、「おしゃれの終着点」と題して衣類ゴミ問題への我が家なりの取り組みの軌跡を二回に分けてレポートします。

ファストファッションなどで「私、たくさんお買い物してます!」が溢れるSNS。

私の住んでいるイギリスには、とてつもなく安くて人気なファストファッション店 “Primark” があります。

Fast Fashion (ファストファッション)とは、短期間に、低価格で、大量生産して服を販売しているリテール業務形態のことで、みなさん聞き馴染みがあるファッションシーズンというと、「春夏」「秋冬」だとおもいますが、ファストファッションはシーズンがなんと一年に52回あるといわれています。1週間、ワンシーズン。それは早い。早すぎる!

Primarkは日本でもおなじみのH&Mよりも安いのです。それってUniqloみたいなもの?と思う方もいるかもしれませんが、イギリス人にとってUniqloの印象は、日本人が持つGAPのイメージと同等、もしくはちょっと上?という感じで、それよりもずっと価格帯が低いのがPrimarkです。

今年の夏頃の話ですが、ティーンエージャーの手前のプリティーン真っ盛りな娘が、「Primarkでお洋服いっぱい買いたい!」と言いだし、内心、来たな!と思いました。娘のYouTubeの閲覧履歴に並ぶタイトルに目を光らせていたのです。

“Cute & Cheap! Summer Primark Haul!!”

(かわいくて安い!プライマークで夏服バク買い!)

“*HUGE* NEW IN ASOS HAUL”

(【爆買い】ASOSの新商品たくさん紹介!*ASOSは日本のZOZOみたいなもの)

空虚なムダ買いをする娘に育ててはならぬと、母は心の準備をしていたのでした。

引っ越しをしてきたこの界隈には、ちょうど大きなPrimarkがあったので、娘と一緒に行きどんなものが売っているかを全部見て周りました。「これもかわいい!これも、これも。」と娘は欲しいものがたくさんあったようですが、「これだけ売ってるってことは、お友達や街歩いている人とかぶる可能性は高いよね。とりあえず他のお店も見てからにしようか。」と言って、黒いレギンスと靴下だけを買って帰りました。SNSの罠にまんまとひっかかった娘ですが、ウィンドーショッピングだけでも割と満足した様子。ホッ。

ちなみにレギンスはオーガニックコットンで日本円で600円くらい。「本当にオーガニックコットン??」と思わず大きな独り言が出て、娘に「やめてー」と苦笑されました。よく娘に「お母さんちょっと声が大きいんだけど…」と注意される母です。

量り売り!買いたい欲を満たすヴィンテージファッションイベント

育ち盛りの娘は、今までの服がずいぶん小さくなってしまい「着れる服がない!」と困っていたので、ヴィンテージファッションイベントで連れ出しました。「かっこいい革ジャンが欲しい」と言う息子も連れて。

カムデンタウンにやってきたPreloved Vintage Kilo というイベントは、セカンドハンドの洋服を1kgにつき£15の量り売りで販売するイベントで、袋につめて最後に計量してお会計、という面白い販売スタイルです。この中古品を表す言葉で “Preloved” (愛用されたもの)という表現があるのですが、セカンドハンドやUsedに比べ、すごくいい言葉だなぁと私も多用しています。古着に抵抗がない人が多いイギリスではこういったヴィンテージ服の量り売りイベントが定期的に全国各地で開催されます。一番規模が大きいのはこのSHOP KILOでしょうか。

左上の写真のように、コロナ対策の人数制限の為、会場に入るまでの長ーい列ができているのを見て息子が「…帰ろう。」と言い出しましたが、飴でなんとかごまかし30分並んで入場しました。無事いい感じの革ジャケット2着を見つけて満足な息子。本革のコートはずっしり重いですが、例えばこの長いムートンジャケットように明らかに重量が1kg超えるものでも、一着£15に据え置き価格で安心して購入できるシステムなんです。

古着屋の街として有名で観光客の多い、カムデンマーケット内よりも買いやすい値段になっているので、学生さんくらいの年代の若い子達がこぞって買いにきていました。

この日は息子の革のジャケット2着の他、娘のジーンズ生地のジャケットなど袋に2kg弱の戦利品を抱え帰宅。昔のものは生地の質が良いものが多く、縫製もしっかりしています。弱って破けたところを直したり、ボタンを付け替えたりと少し手間をかければ、人とかぶる心配もない、すてきで楽しいおしゃれが楽しめます。

手持ちの要らない服と交換!スワップショップイベントのLoanhood

次に訪れたのは服のスワップショップ、Loanhood(ローンフッド)のイベントです。Loanhood は一度しか着ないようなパーティ用のドレスなどのレンタルもしています。服のスワップについては以前Makiさんがこちらの記事にも書いていましたが、下記のようなシステムです。お金を全く介さず、家の不要服がなくなるので一石二鳥!

  1. 自分の要らない服、靴、バッグ等のアクセサリーを1人に付き5点まで持ち寄り集合。子供服でもOK。
  2. 服や靴などを、その価値に合わせたトークンと交換してもらう。(価値あるブランド品の場合1アイテム=3トークン、基本は1アイテム=1トークン)
  3. スタッフはそれぞれの服、靴に何トークンの価値があるか必要の印を付けてディスプレーする。(その間参加者は外で列をなして待機)
  4. コロナ対策のため制限人数を守りつつ、少人数ずつ入場。
  5. 気に入ったアイテムとトークンを交換。

以前、西ロンドンでも同イベントに参加したのですが、欲しいものがなかったのでトークンだけとっておいていました。「次のイベントでもトークン使えるからまた来てね。」と言われて来たのがこちらのイーストロンドンの会場。西ロンドンとは比べものにならないほどの大盛況で、期待値も上がります!

スワップイベントはその日集まったメンツの男女比、サイズに依るので当たり外れは多いのですが、この日は私たちにとって大当たりでした。しかも前に並んでいた男性カップルが「僕たち欲しいものが無さそうだから、このトークンあげるよ。」と私にトークンを渡して素早く去ってしまい、前回から持ち越したトークンも合わせて大量の服と交換することができました。子供たちは、我が家から持っていった服を誰か知らない人が手にしているのを見て、「なんか変な感じ!」とちょっと嬉しそうにしていたり、息子は隣の妙齢の女性に「それ私が持ってきたシャツよ!似合うわね!オールセインツのだからモノが良いわよ!」と声をかけられたり。娘の見つけたPrimark製の服はおそらく今着ている人はいないだろうし、ケーキのアイシングの上にかかっているスプリンクルシュガーのような生地でとても気に入ったそう。試着室も鏡もなく不便ではあるし、早い者勝ちなので周りの勢いに圧倒されつつも、2人とも「お店に行って買うのより面白い!」と、普通の買い物とは変わった体験ができて面白かったようです。

娘の家遊び。サステナブルファッションショーごっこ

娘はファッションが大好きで「将来はモデルと科学をやりたい!」そうです。たびたび部屋の床を洋服だらけにして自分だけのファッションショーが始まります。良い作品になったのをパチリ。よく見たら全てが「これぞサステナブルファッション」といえる面白い組み合わせでした。

まず首から下げているのは、一つは娘が小さい頃自分で作ったTシャツヤーンを編んだネックレスと、ボリュームあるピンクのものはMichell Lowe-Holder(ミッシェル・ロウ・ホルダー)の作品で、ピンクのビニールテープを編んで作ってあります。ミッシェルは身の回りにありふれた使い捨ての素材や廃棄物をアップサイクルして、看過されてきたものに新しい美を与えるような、斬新なアクセサリーを生み出すロンドン在住のアーティストで、V&Aミュージアムのサステナブルファッション展でも彼女の作品が選ばれていました。作品はどれも素晴らしいのでぜひサイトをチェックしてみてください。

トップとスカートはチャリティーショップ(後述)で見つけたもの。スカートは実はムームードレスのようなサマードレスでぞろぞろ引きずるように長いので、私がところどころ安全ピンでつまみ上げ止めて長さ調整を手伝いました。

ソックスは友人のファッションデザイナーMei Hui Liuのもので、彼女のブランドVictimはヴィクトリアン時代の衣服やヴィンテージファブリック、テキスタイルなどを幾重にも組み合わせ、アップサイクルして別次元の芸術を作りあげてしまう才能溢れた芸術家で、誰もサステナブルを気にしていなかった20年ほど前から一貫して、サステナブルファッションをテーマに作品作りをしています。

靴は私のClarksの仕事靴をいつまにか引っ張り出して履いてました。

服、おもちゃ、家具、なんでも不用品を持っていけるチャリティショップ

チャリティーショップとは、イギリスの街に日本のコンビニくらいたくさん並んでいるリサイクルショップなのですが、世界の子供のためのチャリティーだったり、ガン研究のための資金集め、お年寄りをケアする団体、とそれぞれ独立したチャリティーが運営していて、家の中で不要な家具や服が出るとチャリティーショップに持っていくのがあたりまえになっています。

以上、今回は不要な衣類を人から人へと渡して有効利用する取り組みの話でした。

私は今まで、チャリティーショップに持っていった服は当然その店や系列店で売られるのだろうと思っていたのですが…ある程度の期間、店頭に置いても売れなかった服の行く末を最近知り、ショックを受けました。

次回、おしゃれの終着点その2では、ヨーロッパから出た不要服のショッキングな終着点の様子、そして、リサイクルとはまた少し違う日本の再利用の取り組みを紹介します!

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