ご先祖さまも食べていたベビーキウイ(kiwi berries)

以前にこの記事で紹介した英国の「Oddbox」という野菜と果物の宅配ボックスに、”kiwi berries” という果物が入っていました。

廃棄処分になるものを集めてさばく、というサービスなので消費者が中身を選べず、何が届くかはおまかせ。

去年の夏、みたこともない”Tayberries”という細長いラズベリーの一種でジャムを作ったら、忘れられないくらい香り高いジャムになってとっても美味しかったし、たとえあんまり美味しくなかったとしても新しいことを知れるのは楽しく、Oddboxのサプライズは大歓迎なのです。

Oddbox: 廃棄処分になる野菜や果物を集め、詰め合わせにして週一回、英国内局地的に配達されるサブスクリプション型宅配サービス

キウイベリー、大きな葡萄くらいのサイズです。

今回届いたこのキウイベリー、一体どうやって食べるのでしょう。
調べてみたら生で皮ごとそのまま食べられるそうです。とりあえず切ってみます。

切り口は完全にキウイ。

食べてみたら甘酸っぱくて美味しい!

「キウイだと毛が生えた皮をとらなきゃいけないけれど、キウイベリーはそのまま食べられるからいいね!」と、甘酸っぱい味が大好きな子供たちも気に入って、すごいスピードで食べていき、あっという間になくなってしまいました。

調べてみたらイギリスのスーパーマーケットでも5年ほど前から9月下旬から11月初旬の間に出回るそうです。今まで目に入らなかったのが惜しまれる。

お弁当に入れるのにもちょうど良いし、これでジャムも作りたい。たくさん買いたいのですが今はどこも品切れのよう。短い旬の間にもう一度お目にかかれるのを期待します。

縄文時代のご先祖様もキウイベリーを食べていた?

産地がどこなのだろう?と興味が沸き調べてみたら、なんと日本が原産!まさかの和の果実でした。

日本名では「サルナシ」「こくわ」と呼ばれていています。この名前で、あ!と思う人も多いのではないでしょうか。「コクワの実」というフレーズは有名なドリカムの歌の中にもあり、誰でも聞き覚えがあるのでは。

日本では北海道から九州まで広くわたって山々に自生していて、熊や猿などの野生動物の大好物。

名前の由来は、実が梨に似ていて猿が好んでよく食べるから「猿梨(サルナシ)」と呼ばれる説が一番有力。

サルナシという呼び名の他にもたくさんの別名があります。これはいろんな地域で食用、蔓が利用されたりして生活に密着していたという証拠なのかな、と思います。

「シラクチヅル」「ハシカズラ」「イカダムスビ」。北海道では「コクワ」。アイヌ語で「クッチプンカル」。最近コストコなどでは「ベビーキウイ」として売られているそう。英語圏での呼び名は「kiwi berries」。

呼び名が色々なだけでなく、サルナシは種類も豊富で、貫太郎、里泉、長寿郎、という種類の他、わかっているだけで300種くらいあるそうです。サルナシもリンゴのように色、形、味もいろいろなものがある、ということで中には赤や紫(紫香という種類)の実になるものもあります。

サルナシの日本以外の原産地は韓国、中国、シベリア。現在では「新しいキウイフルーツ」としてアメリカやニュージーランド、ヨーロッパでも栽培されています。

サルナシが文献に残った歴史的記述は、養生訓で有名な貝原益軒の「大和本草」 (1708年)が最古のもので、「彌猴桃(ヤマナシ)」という名前で登場します。サルナシは日本人は少なくとも300年前から食べてきた山の恵みということになります。

難解漢字として出てくる「彌猴桃(キウイ)」。一体どうしてこんな漢字になったのか気になったことがあるのですが、最初は「ヤマナシ」と読んでいたのですね。

貝原益軒の「大和本草」木之上 果木類にサルナシは「彌猴桃(ヤマナシ)」として登場。梨に似ている、と書いてありますね。
(画像は中村学園大学図書館の貝原益軒アーカイブから抜粋、加工しています)

栗が主食だった縄文時代の植物採集生活の中で、きっとサルナシの実も採集して食べていたはずでは?と仮説も立てられてワクワクしますね!

美味しくて身体に良いサルナシ。日本古来の果物を見直したい

先日のポポーの話に引き続き、日本に自生する果物が普及していない、知られていない、というのは残念なことだなと感じました。

私も今回キウイベリーが届いたことで初めて調べてみて、「サルナシ(こくわ)を広めよう!」と頑張っている自治体や個人の方がたくさん存在することを知りました。

探してみると、サルナシはワイン、リキュール、ジュース、ビネガー、ジャム、ドレッシングなど様々な商品があります。これら全部試してみたい!

昔の人は食=薬の知識が今よりも優れていたところもあると思いますし、昔からサルナシを生食以外に薬として摂っていたこともわかっています。サルナシはレモンと比べてビタミンCの含有量も10倍以上、他にはビタミンEはアボカドの2倍、βカロチン、カリウム、ルテインなども豊富です。タンパク質を分解する酵素も非常に強いこともわかっています。

蔓や葉も有効利用できるようで、蔓、葉を乾燥させて焙煎して飲む「さるなし茶」は抗酸化性や抗遺伝毒性作用があるという最近の研究も見つけました。

サルナシを育ててみたい。

美味しくて栄養抜群の実がなり、蔓や葉で健康茶も作れるのであれば、ぜひ育ててみたくなりますね。気がつかないだけで実は近くに生えているかもしれません。有元も長野の別荘地内でサルナシが自生しているのは知っているそうですが、実が成っているところはみたことがないそう。育て方を調べてみました。

マタタビ属のサルナシは、雌雄雑居性のつる植物で日当たりの良いところを好みます。サルナシの木は根が浅いことから霜に弱いことが弱点。土の上にバーク堆肥を数cmほど被せてお布団をかけておくと良いでしょう。放っておくと50メートルくらい這い上がってしまうので、実を採りやすいよう剪定が必須です。とても丈夫な木で虫もつかず、5年目位から花が咲き実が成ります。実が成るのは雌木のみ。雄木1本で8本くらいまでの雌木に受粉が可能だといわれています。

どこにでも植っているびわの木のように、きっとこれから日本のお庭にはどこもサルナシの木を植えるようになるかもしれませんね!

参考リンク:北海道産サルナシ果実中のシステインプロテアーゼの 生化学的諸性質および生理学的機能の解析 pdf

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