日本の台所に欠かせないカタクチイワシ
関西では『いりこ』、関東では『煮干し』と言われます。
私は関西人ではないけれど『いりこ』と呼んでいます。
我が家で使っているのは伊吹島のやまくにさんのいりこ。
解禁日の漁を見ようと、やまくにさんの通称「いりこのおっちゃん」の案内で伊吹島へ行ってきました。
島へ行く前にまずいりこ出汁のうどんで腹ごしらえ。
うどん県香川でもちゃんといりこから出汁をとっているうどん店はここだけ、という宮川製麺所へ。
「いりこ出汁のうどんが食べられるのはここだけ」って、一体どうして?と愕然とした気持ちに。
家でうどんを作る時は、当たり前のようにいりこ出汁で食べている私には信じられないような事実です。
いりこ出汁と一口に言っても、鰹と昆布を合わせた合わせ出汁だったり、使っているいりこも脂が回って黄色くなったものを使用していたり、と色々あるそう。
上物のいりこだけをふんだんに使ったお出汁は宮川製麺所だけ、ということなんですね。
うどんはいりこ出汁にかぎる
丼に麺を入れ自分で鍋からいりこごと出汁をしゃくって入れ好きな具を乗せて生姜やネギを乗せていただきます。私はかき揚げをのせました。
うちと同じいりこの出汁を外で食べたのは初めて。
やっぱりいりこ出汁は美味しいなーとしみじみ思います。
うどんはいりこ出汁にかぎります。
いりこ漁の見学へ
四国香川県観音寺町からフェリーで伊吹島へ。フェリーからもいりこ漁の漁船が操業しているところを見ることができます。
島に降り立つと海岸に沿っていりこの加工場が並んでいます。
海から上がってすぐのいりこを釜で塩茹でし、乾燥させます。
水揚げされたカタクチイワシはフィッシュポンプであっという間に吸い上げられます。
即座に木枠の網の上にならされて、水洗いしてから熱湯で3、4分程さっと茹で、巨大扇風機で粗熱を取った後に乾燥庫で乾かします。
塩気は各加工場であんばいが違うのだそう。活きたまま茹でられたいりこは口が開いています。
乾燥させる前の、茹でたてのいりこをちょっとつまみ食いさせていただきましたが、それはそれはおいしくて手が止まりませんでした。
海で分かる、ありありとした地球の変化
海水温の上昇や汚染でいりこも風前の灯、というおっちゃんの話を聞き、ここでもやはり、これからどうなるのか…と不安がよぎります。海水温が高いことで魚の脂がきついそうです。脂焼けしたいりこからはスッキリしていながら旨みたっぷりの出汁は取れません。海水温が高ければ身もしっかりしないので腹が破けやすい。今まではいなかったやたらに大きすぎるハモや南の魚が一緒に網にかかったり。銀つきと呼ばれる鱗が銀色に光る美しい姿のいりこはなかなか手に入れるのが難しい状況になっているそうです。プラごみはかなりの量が漁れる(?)嬉しくない獲物は増える一方、と。
自然の恵みに生かされて。享受するだけで終わらないために
こんな不安を抱えながらも、一生懸命漁をして良いいりこを世に出そうと額に汗する方々の話を聞きながら、この事態の中で努力する方々のおかげでまだ私達は美味しいいりこのお出汁をいただけるのだな、今手に入るいりこを大切にしっかり味わい尽くそうと心底思いました。
いりこ作業場を後にして島を一巡り。坂道だらけの島の一角にこんなアート作品が。
かつての産院跡で島の新米お母さんと赤ちゃんはここで大切にされ、経験豊かな島のお母さんたちと一緒に安心して1ヶ月を過ごしたそうです。島のあちこちには進む高齢化による廃屋が次々と現れて考えさせられることの多い散策となりました。深い問題も抱えているけれど、世界にも稀な風景を持つ瀬戸内はどこまでも美しい。
今回の旅は自然の恵みに感謝する気持ちと、一人一人が地球のために何ができるのか今すぐ考えて行動する責任を、改めて考えさせられた貴重な旅となりました。
今回一緒に行った高知在住のくるみからのメッセージものせておきます。
「以前は4300人住んでいた伊吹島、現在は430人。水揚げ量も減っていると同時に、圧倒的に人手も足りない状況です。
このいりこ漁も含めて、将来、海から魚がいなくなると言われています。同じ地球上の生物としてバランスよく共存する方法を実践せねばと強く感じました。
いま世界中の海はとんでもなく汚染されています。私たちの家庭から流れるものも海へ流れています。洗剤や漂白剤、消毒液、柔軟剤。。。排水溝からのその先は人の目からは見えなくなるので、そこでもう気にしなくなってしまいます。
もっともっと一人一人が意識して、何を選択するのかを考えないと近い将来、日本の豊かな食は消滅します。かなり時間が無い事態にまで来ていると思います。」