穴あき布地、どうやってリペアする?
虫喰いの穴、ひっかけた穴、擦り切れて開いた穴。
私の持っている服は20年以上もっているものがほとんどで、服に穴が開くのはよくあること。その穴を塞ぐのはいつも自己流でなんとなくやっていました。
イギリスのロックダウン生活のある日のこと。
服のリペアも生業の一つにしているアーティストが、オンラインで「リネンのリペアワークショップ」を開催すると聞いて、わくわくして受けてみました。
Molly Martin (モリー・マーティン) さんという、絵本の主人公の少女のような雰囲気のある方が先生。イラストレーターの傍ら、ロンドンのセレクトショップ「Egg」、アパレルブランドの 「Toast」で洋服の修繕のお仕事もしているのだそう。
彼女のやりかたは穴を隠したり見えなくする方法ではなく、「日本のsashikoのスタイルで直していきます。」とモリーさん。
いきなり日本の「刺し子」というワードが出てきて嬉しくなりました。
「日本やインドには昔から布を大事に使う文化があって、インドではkantha quilt、日本ではsashikoやboroが有名ですね。日本の人は器が壊れるとkintsugiという金で繋いでひび割れや欠けを美しいアートにしてしまうの。」
あ、今おしりの下に敷いているのはカンタキルト。そして日本語の聞き慣れた言葉たち。
その場にいたたくさんの参加者の中で、日本人はどうやら私だけのようですが、みなさん「金継ぎ」も「ボロ」も知っているという風な聞きぶりで、ちょっと驚き。
「大事な洋服でいきなり始めて失敗すると大変なので、まずは練習しましょう。」
と小さな布きれでデモンストレーション。
私は穴あきの布巾で練習してみます。
必要なもの(上の写真参照)
- ミシン糸
- 刺繍糸
- 針
- 補強用の薄手のリネン
- ミツロウ
今回はわかりやすいように赤い刺繍糸でリペアしてみます。
まずは穴の部分に補修布をあて、ミシン糸で周囲を軽くしつけ縫いしておきます。
「刺繍糸は、腕を伸ばして、爪先から肩までの長さで切るのが使いやすい長さですよ。」
とお裁縫初心者にもやさしいアドバイスをくれるモリーさん。
そうそう、針穴の糸通しがめんどうだからと糸を長くしすぎると途中でこんがらかったりして大変なんですよね。
「刺繍糸にビーズワックスを2、3回、こすり付けておきます。」
はちみつ屋で買ったミツロウのブロックがこんなところで役に立つとは、うれしい!
このひと手間をしておくと、刺繍糸は切れにくく、もつれにくく縫いやすくなるそうですよ。
ミツロウなので、お湯で洗濯すれば落ちます。
穴のところ、このように布地から糸がぼさぼさと出ていたらハサミで綺麗に切り取っておきます。
さあ縫い始めます。
「針はシャープなものを使ってくださいね。ほんとうにそれが重要です。針がシャープじゃないと、生地を痛めてしまうこともあります。かならず、シャープなものを。」
と念押しするモリーさん。
針が鈍くて困った経験はまだなく実感がないですが、まぁ針は鋭いほうが良いだろうな、と思いながら進めます。
裂けた穴に垂直に縫い目が走るように縫っていきます。この場合は穴が丸いのでさほど方向は気にせずに。
玉留めはせず、最初の3針は行ったりきたり、往復させて固定します。ミシンでも縫い始めにやりますよね。それから細かめの「なみ縫い」。
「レンガの積み方と同じように、互い違いに縫い目が出るように、二列目、三列目、と縫っていきます。」
「列の幅はなるべく狭くするとしっかり補強されますよ。」とモリーさんがいうので、なるべく細かい幅で縫うように心がけます。
縫い終わりの3針も、いったりきたり縫って固定します。
最後はしつけ糸を取り除いて、余った刺繍糸も切り取り完成。
これはリネン素材のやり方でしたが、
デリケートなシルク、厚手のジーンズ、Tシャツのような伸び縮みする素材も基本的には同じやり方でリペアするのだそう。
シルクの場合は当て布をなるべく薄い素材を選び、端の糸を少し抜いてフリンジにすると、当て布の境目がゴロゴロしないのだそうです。
「Tシャツは同じように伸び縮みする素材を当て布の使えば良いんです。ほら、今きているシャツもここ、直しています。」と二、三箇所直したところを見せてくれました。
そうでした!
私もお気に入りのテロンテロンの肌触りの良いTシャツが穴あきだらけになってしまったことを思い出しました。
あまりに生地が薄くなってしまいどう直していいのかわからなかった…。
あれを直してみることにします。
モリーさんが気になる人は、こちらをチェック
この春に初めての著作を出すモリーさん。彼女のインスタグラムもステキですよ。https://www.instagram.com/molly.a.martin/
人柄もイラストも、魅力の詰まった一冊はこちら。
リペアの詳しいやり方やたくさんのストーリー、写真満載で楽しめます。
特に生地事体が擦れて薄くなってしまった服を、どう直したらいいのかわからなかったので、モリーさんのレッスンを受けて本当に良かったです。
さっそく服をリペアをしてみた
着倒して擦れて薄くなってしまった生地は、なるべく広範囲でこの刺し子リペアをすればまた寿命が伸びる、穴が開く前だとより良い。と教えてもらい、このやり方で直したい服がたくさん思いつきました。
さて、家の中でしか着れなかった穴あきTシャツはこれ。こうなりました。
本当は同系色の糸で目立たせずやるのが良いのですが、きのこ柄の布巾のリペアがかわいくできたことに気を良くして、わざとカラフルにしてみました。
やはり生地が薄すぎて、しつけ縫いをしてもフラットに固定できず難しい…。
ならば、とアラビックヤマトのりでまず補強布とシャツを貼り付けてから縫ってみました。
こういう裏技って元々あるんでしょうか。のりが乾くと少し固くなるので余計に縫いやすくなり、かなりオススメです!
シルクのようなデリケートな薄い布のリペアも、補強布をアラビックヤマトのりでまず貼りつけてしまうとやりやすいかもしれませんね。洗えば落ちますし。
お裁縫のプロには怒られそうな方法ですが、自分の服を直す為なのでまったく問題ないでしょう。
この直した穴をみてちょっと湧き上がる満足感。自己満足、でいいのですから。
「マインドフルネスにも良いんですよ、こういう作業って。リラックスできるでしょう?」
とモリーさんは言っていました。
こんな風にリペアした穴あき服、私は好きです。これから暖かくなるので外へも着て行けます。
数回着ては捨ててしまうような安価なファストファッションを買うのはもう止めよう!というムーブメントもやっと大きくなってきた昨今。有元葉子の著書、「使い切る。」にも通じますが、好きな服は大事にずっと長く着たいですね。