庭にピザ窯を作りたいというのは、家が建つ前からの有元の希望でした。
満を持して、とうとう作ることにしたのです。
自力で一から作るピザ窯
建築家という職業の人間は、市販品やキットを購入するのではなく、できれば自分好みでデザインしたものを作りたいと考えます。しかし、そもそもピザ窯とはどうあるべきか、どう作ればいいのか、全く初めてで基本的なことからしてよくわかりません。
そこで、研究と称して「手作りの窯で薪でピザを焼くお店」を探し、食べに行くところから始めました。世の中に窯焼きピザのお店は沢山ありますが、ガス窯を使っているところも多いのです。
千葉県の金谷に「地元の石材を使った手作りの窯のあるお店」があると分かり、遥々訪ねました。ここは有元が以前から小耳に挟んでいて一度行きたかったところだそうで、自分たちでピザ窯をせっかく作るのなら国産の自然石を使うのが理想ですし、千葉の房州石というものが使えたら面白いのではないか、とワクワクした気持ちで行ってみました。
そこのお店の方がとても親切に「窯の構造から外部に使っている房州石のこと、350度まで温度を上げる必要があり、開店2時間以上前から薪を燃やし始めること、温度測定器を使うこと」など様々教えてくださり、お店の窯の寸法も測らせていただきました。
そうして一通りの知識を得たところで、さて、うちの場合はどうするか。
自然石でできれば理想的でしたが色々とハードルが高く、入手しやすい耐火レンガ(ただし国産!)で作ることにしました。
ピザ作りのためには、ある程度の大きさがあるドーム型の窯が一番良いのですが、それでは庭の景観の中で主張しすぎてしまいます。我が家のピザ窯はコンパクトなさりげないデザインを目指しました。また、目地を耐火セメントで固める作り方では、雨で目地が流れだしてしまうため屋根が必要になってしまうのでただ積むだけで作ることにしました。積むだけであれば、直しやちょっとした改変も後から簡単にできます。規格の耐火レンガを積むだけで出来るようにして設計図を描いて材料を用意し、いよいよピザ窯作りのスタートです。(ちなみに、設計と作業は職人肌の主人で、私はその職人さんに休憩のお茶をいれる係です。)
ピザ窯1 大事な基礎作り
たった70~80cm四方程度の小さな場所ですが、庭の凹凸のある地面を締め固め、その上にまったくの水平なコンクリートブロックの面を作るのに2日もかかってしまいました。そして土台の上に底板のレンガを並べます。
ピザ窯2 開口部のアーチ作り
耐火レンガをタガネを使って割り、思った通りの角度をもつ部材を作ります。直角ではないので結構難しく、根気のいる作業です。面倒ではありますが、上部に熱をためつつ下部ではピザの出し入れが出来る、という点で開口部はやはりアーチ形にしたいのです。
ピザ窯3 レンガを組む
アーチ部材が完成したので、いよいよレンガで組み立て行きます。
出来上がりました。
装飾のないソリッドな組積造がどことなく素朴な11世紀頃のロマネスク様式の教会の風情…と我々は悦にいるのでした。
親子三代 初めてのピザ作り
朝8時から薪を燃やし始め、温度を350度まで上げるには金谷のお店の方も言っていたように時間はかかりますが、ちょうど、ピザ生地つくり・材料用意なども同じ時間から始めると、ほぼ同時期に両方の準備が整います。
記事の冒頭の写真は、一番最初に作ったピザです。入れるとすぐ焼きあがります。皆がわくわくして見守る中、引き出してみたらぷっくりと膨らんで、とてもピザとは言えない形になってしまっていました。
味の方はとても美味しく、不恰好でも一向に構わない我が家の面々は、次々と生地をのばして、好き放題にあれこれと具を載せて、釜にいれます。
ローズマリー+蜂蜜ピザは、最後のしめとして、すごくよかったです。
たらふく食べた後なのですが、最後はちょっと甘いものが食べたくなるんですよね。
有元が、お庭にあるローズマリーとハチミツにしたら?とひらめいて、ローズマリーの香りと信濃町のりんごの蜂蜜で即興で作られた一品ができあがりました。
アツアツを食べたいから、作って焼いて食べて、とても忙しい。オーブンでは絶対にできない、薪の香りのするピザはとても美味しいです。
そして、かなり薪を使いますね! この日から裏山での薪拾いの日課が始まりました。自然の恵みに感謝!
・・・End